英語を勉強している日本人が「英語」を話すにあたって過剰に気にすることがあります。それは「訛り」です。
いまだに多くの人が「ネイティブのような英語が本当の英語」という認識をしているようです。留学先に英語圏を選ぶ人が多いこともその表れでしょう。
そしてネイティブのような完璧な発音を目指して勉強を始めるものの、なかなか習得できずに途中でフェードアウトしてしまう人も多く、それが英語を苦手に感じる要因にもなっています。
近年はアジアからの観光客が激増し、街に出ればいろいろな言語が飛び交うようになりました。中でも中国、香港、韓国、台湾からの観光客は多いように感じます。
ビザの緩和によってマレーシアやタイなのど東南アジアからの観光客も伸びてきており、ここ最近はフィリピンやベトナムからも観光客が急増しています。今後もこの傾向は続くでしょう。
こういった状況から、観光客と接する仕事に従事されている人は頻繁に彼らとコミュニケーションをとる機会が多いです。そうすると、各国の人が話す英語、それぞれに特徴があることに気がつくと思います。
それぞれの国の「英語のクセ」、それが私たち日本人の間でいうところの「訛り」です。
同じ英語の文章を読んでもらっても、多少なりとも各国違った発音やアクセントになります。もちろん個人差はありますが、発音にはその国の母国語や英語教育、文化が強く影響します。
ただし、ネイティブとまったく同じ発音ではないからといって、「その英語の発音は間違い!」ということにはなりません。正確な発音から大きく外れていれば別ですが、もしネイティブが聞いても普通にコミュニケーションが成り立つ程度は許容範囲です。
聞き取れない理由はリスニング力が乏しいから
たまに英語を使う機会のある日本人の中には、英語が十分に聞き取れない理由を「相手のなまった英語の発音のせいだ」と言う人も少なくありません。
本当にそうでしょうか?
そうだとすれば、こういう人はたとえばアメリカのテレドラマを字幕なしで見て、その内容を聞き取れる、ということになります。なぜなら、そこでは訛りのない発音で、かつネイティブの標準の発音の英語が話されているためです。
それでは、クセのある英語を聞き取れない原因は何でしょうか?
それは本人の「リスニング力不足と経験不足」によるものです。
なぜなら、アジア圏の人たちが話す英語がネイティブには通じていて、それで円滑にコミュニケーションが成り立っているからです。
私が東南アジア各国を訪れたとき、アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどから来ていた観光客が、彼らの接客をしているスタッフのクセのある英語を特に聞き返すこともなく、聞き取っていてスムーズに会話をしている光景を幾度となく目にしました。
当時の私はどこの国へ行ってもその国の人が話す英語を聞き取るのに苦労しました。そして何度も聞き返しながら話をしていたのに、彼ら欧米の人たちはなんてことなく普通に会話をしていました。
そのとき、英語が聞き取れないのは相手の発音のせいではなく、単に自分のリスニング力が圧倒的に不足していることを痛感しました。
その後、言語について勉強をしていくと、『第二言語を習得するときは母国語の影響が現れる』・『コミュニケーションツールとして英語を捉える』という重要なことを知ることができました。
つまり、われわれのように、英語が母国語ではない国の人が他の言語を習得するときには、必ず母国語の発音が習得言語に影響するのです。これは研究によって判明していることです。
それゆえ、中国や韓国、東南アジアの人たちの話す英語には彼らの母国語の発音の特徴が混ざっているのです。母国語は国によってアクセントや発音する際の舌の位置や、音の出し方が千差万別です。
日本人の特徴として、英語の[r] [l]の発音が日本語の「ら」の発音と同じになってしまうことを例に考えるとイメージしやすいと思います。
当然英語学習においては、なるべく正しい発音ができるように練習することが望ましいです。英語には私たちの母国語にない音があるために、その音を出せるように訓練することはとても大切です。
しかし、ネイティブが話す英語の発音とまったく同じように発音できなくても何も恥じることはありません。世界では「グローバルイングリッシュ」という、異文化同士が繋がるための共通語として英語を捉えることが一般的です。
そのため、ビジネスにおいても、異国の人と会話するときの日常においても、「ネイティブと同じ正しい発音」よりも「今使えるレベルの英語で相手とコミュニケーションを取ろうとする姿勢」が何よりも大切なのです。
とあるテレビ番組で出川さんが外国人とコミュニケーションをとっている姿を見たことがある人もいるでしょう。理解しやすく伝えるための文法は必要ですが、発音に関してはなにもネイティブ並みの綺麗さがなくたって大丈夫です。
以上のように、英語を身につけるときには『母国語の発音が影響する』、『コミュニケーションの道具として考える』、これらを知っているだけで楽に考えられ、共用範囲も広がるのではないでしょうか。